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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第38章 お粥と意地


優しい手つきで、五条はされるがまま背中を預ける

「熱、上がってるね」
額へ触れた指先はひんやりとしていた
今度の五条は、その手を払わない
い指が前髪をそっと整えた
『…ちょっとだけ失礼』
冷却シートを新しい物に貼り直す
『これでよし』
「……」
五条はその指先が離れていくのを、少しだけ惜しいと思ってしまった

理由は自分でも分からない
紅海はお粥を茶碗によそい、スプーンを入れる
『熱いから気を付けて』
差し出された茶碗を受け取り、一口食べる
優しい味が口の中へ広がる

ちょうど良い塩加減
生姜の香りが鼻へ抜ける

「……」
『どう?』
「……普通」
『よかった』
その「普通」が、紅海には十分な褒め言葉だった様で
ほっとして肩の力を抜き笑みがこぼれた

五条はつられて口元を緩めた
「…笑った」
紅海が目を丸くする
『あ、いや…ホッとしたから笑ったんだよ?』
「解ってるって」
五条はまた一口、お粥を口へ運ぶ
「そんな安心した顔すんなよ」
『だって』
紅海は少し困ったように笑う
「悟が心配だったんだもん」
その一言に、五条は茶碗を持つ手を止めた

こんなふうに、心配してくれて、自分が食べたことを誰かが嬉しそうに笑う
そんな経験は、ほとんどなかった
照れ隠しに視線を逸らしながら、小さくぼやく
「…世話焼き」
『そうかな?』
「そう」
『でも、放っておけなかったんだもん』
悪気も打算もない声

ただ心配だから
その無防備な優しさに、五条は返す言葉を失う
胸の奥が、熱とは違う理由でざわつく
…ほんと、調子狂うやつ

お粥を口へ運びながら、そんなことを思う
向かいでは、「ちゃんと食べられてよかった」とでも言いたげに、静かに微笑んでいた
五条は、その笑顔が眩しくて視線をそらした


しばらくして
部屋には、お粥の香りがまだ残っている

空になった茶碗を受け取ると、紅海は満足そうに微笑む
『ちゃんと食べて良かった』
「腹減ってたからね」

フフッと本当に安心したような笑顔を見せる

それが五条には少し眩しくて、視線を逸らす
紅海は茶碗を洗い、鍋を持って立ち上がる

『じゃあ、帰るね、ちゃんと暖かくして寝るんだよ?』
まるで小さな子どもに言い聞かせるような口調だった
『薬も飲んで、水分もちゃんと取って…』
「分かったって」
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