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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第38章 お粥と意地



寮へ戻る道は、夕暮れの色に沈んでいた
五条はいつもよりゆっくり歩いていた
それでも、『肩貸そうか?』と言われたら「いらない」と短く返す

その声音は素っ気ないが、追い払うような強さはなかった
部屋の前まで来ると、五条は鍵を回し、扉を開ける
「……ありがと」
ぽつりとだけ言って、中へ入った

紅海は手にしていたスポーツドリンクを机へ置く
『ちゃんと水分補給してね』
「はいはい」
返事だけは軽い

けれど、その声に普段の張りはない
紅海は少し迷ってから、小さく微笑んだ
『あの、ちょっと鍵しないで待ってて…寝てても大丈夫だから』
「……?」
『すぐ戻るからね?』
そう言い残して、ぱたぱたと廊下を駆けていった

扉が閉まり静寂が部屋を満たす
身体が重い鉛でも飲み込んだように、手足に力が入らない
熱が上がったのか、頭の奥がじんじんと脈打つ
「はぁ……最悪」
制服のジャケットだけ投げ捨てて、そのままベッドへ倒れ込む
天井がぼやける
少し横になるだけで眠るつもりはなかった

そう思ったのに、意識はあっという間に沈んでいった


──コンコン
控えめなノックの音

『……悟』
返事はない
『入るね?』
静かに扉が開く

紅海は小さな鍋を持っている
ご飯の甘い香り
生姜がほんの少しだけ香っている

『……寝てる?』
ベッドを覗き込むと、五条は片腕で目元を覆ったまま動かない
額の冷却シートは少し端が浮いていた

紅海は足音を忍ばせて近付き、小さな机へ鍋を置く
その物音で、五条がゆっくりと目を開けた

「……ん」
掠れた声

『起こしちゃった?』
「……何時?」
『もうすぐ、19時…あれから、30分くらいかな?』

紅海は鍋の蓋を開ける
白い湯気がふわっと部屋へ広がった
「お粥?」
五条がぼんやり眺める
『食べられるなら、少しは食べた方がいいと思って』

五条はその笑顔を見つめたまま、数秒黙る
わざわざ…作ったのか

任務帰りで、じぶんだって疲れているはずなのに
「……ん」
短く返事をして、重い身体を起こした
その動作だけで息が漏れる
『ゆっくりね』
紅海は慌てず、枕を背中へ当てて支える

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