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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第38章 お粥と意地


木立に囲まれた、小さな自販機
夕日が長い影を落としているベンチが一つ
そこに、長い脚を投げ出して座る白髪が見えた
『……悟!』
息を切らして駆け寄る
五条がゆっくり顔を上げた
『……はぁ、はぁ……いた』
紅海は肩で息をしながら、その前でしゃがみ込む
五条はペットボトルを片手に持ち、ぼんやりとこちらを見ていた
頬が少し赤い目元にも熱がこもっている

しゃがんだまま、五条を見上げる
『しんどい?』
「別に」
返事は相変わらず短い

『別にって顔じゃないよ』

袋から冷却シートを取り出す
包装を破り、保護フィルムを剥がした
『ほら…これ』

「……え」
額へ手を伸ばす
ひやり、と冷却シートが触れる…
「ちょ、やめろって」
五条が身を引いた
「恥ずかしいだろ」

その一言に、紅海の手が止まる
『あ……』
少しだけ俯いてしまう
『……ごめん…そーだよね』
しゅん、と肩を落としたその様子に、五条は言葉を失う

追い払いたかったわけじゃない
熱で頭が回らないまま、反射的に口をついて出ただけだった
「……いや、その…」
珍しく言葉に詰まる

紅海は困ったように笑って、冷却シートを持て余す
「でも……」
小さな声
「熱があるのに、我慢しちゃ駄目だよ」

その言葉には、責める響きはなかった
ただ心配で仕方がない、という気持ちだけが滲んでいる

「部屋、帰ろ?」
そっと五条の背中へ手を添える
一定のリズムで背中を撫でる手のひら
熱で張りつめていた神経が、少しだけ緩む
五条は視線を逸らす

……なんなんだよ
その手が触れているだけで、不思議と安心する
だから余計に素直になれない
「……歩けるから」
『うん…でも、一緒に帰ろ』
紅海はそれ以上無理には言わない

ただ隣に立ち、五条の歩幅に合わせて歩き出す
夕焼けに二人の影が長く伸びる

紅海の手には、貼り損ねた冷却シート…
その姿を見て、五条は小さく息を吐いた
「……貸して」
『え?』
「それ」
紅海が目を丸くしながら冷却シートを差し出すと
五条は少し照れくさそうに受け取り、自分で額に貼り付けた

ひんやりとした感触に眉をしかめながら、ぶっきらぼうに言う
「……これでいいだろ?」
その横顔に、紅海はようやく安心したように笑った
『うん』
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