第9章 嘘と観光
ウキウキした 紅海と、それを見て、にこやかな遊佐
五条だけ考え事をしている
3人は、メインデッキに上がり、さらに案内される
トップデッキ行きのエレベーターへ
乗り換えのために足を踏み入れた、その瞬間
空気が、落ちた…重く、粘つくような呪力が、箱の内側から広がる
次の瞬間、視界の端で黒い帳が降りるのが見えた
「……帳!?」
反射的に五条が一歩踏み出したが
エレベーターの扉は無慈悲に閉まり、内部に残ったのは非術師と 紅海と遊佐だけだった
エレベーターの小さな箱に下ろされた帳
一緒に中に入っていた非術師の動きが何故か止まる
ごくり、と、 紅海が喉を鳴らす
『遊佐くん…これ…普通の帳じゃない気がする』
「そやな…最初から五条さんを入れんタイミングやった…」
普段、自分達が使用している帳とは違う用途での帳
エレベーターは静かに上昇を続ける
外の喧騒は消え、耳鳴りのような静寂が支配した
到着
トップデッキは、すでに術式の組み込まれた帳が下り
異様な静けさに包まれていた
観光客たちは立っている者や座っている者
だが――動かない
時間を止められた非術師たち
「…非術師限定の停止術式か?
下手に暴れたら、この人達が巻き込まれるちゅう事か…」
遊佐が、淡々と吐き捨てる
だが、そうする意図が解らない…
次の瞬間、空間が歪んだ
「来…た…」
呪霊が呟く
人の形をなぞりながら、赤と白の包帯を巻き付けて
人ではない顔立ち
大方、ココの神社に祈りに来た不純な祈りが呪いになったんだろう
だが、問題はそこではない…人の形、知能が有りそうだ
1級前後のクラスと感じる…
呪霊は、はっきりとした言葉で呼び掛けた
「 流鏑馬 紅海」
その名を呼ばれ、 紅海の背筋が冷える
『…私を知ってるんだ』
「当然だ。お前…の呪力は、特別だろう?」
呪霊は笑う
紅海は見当がつかない
昔から呪力量は桁違い…これは把握している
幼い頃から、その呪力を狙って呪霊が襲ってきた…
でも、特別って?
「取引をしよう
コチラ側に付いて、呪力の提供をして…貰う
そう…すれば、この辺りにいる人間…を生きて帰す」
『呪霊が取引?』
コチラ側?何か共通した目的がある呪霊達?と言う事?
紅海は、呪霊をどうするか、考えを巡らす