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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第38章 お粥と意地


少し離れた場所で見ていた夏油が、小さく息をつく

「紅海、心配なのは解るけど…ああなったら無理だよ」
『え?』
「悟は意地っ張りだからね」
夏油は苦笑した
「調子が悪いと認めたら負けだと思ってる節がある」
『え~、そんなぁ』

「だから、本人が『大丈夫』と言ったら、意地でも押し通すよ」
硝子も柵にもたれたまま、ため息をつく
「熱があっても『平熱』って言いそう」
夏油が肩をすくめる
「実際、言うだろうね」

紅海はもう一度、五条の背中を見た
いつもより少しだけ歩幅が狭い
肩で息をしているようにも見える
それでも誰にも気付かれないよう、いつも通りを装っている
…本当に大丈夫なのかな
胸の奥に、小さな引っ掛かりだけが残った

午後になると、四人はそれぞれ別の任務
校門前で補助監督の車に乗り込む五条は
いつもなら
「じゃ、一番に終わらせて帰ってくるよ」
なんて軽口を叩くはずなのに
今日は、窓枠に頬杖をつき、無言で出ていった

やっぱり体調悪いよね…
紅海の任務は順調で、二級呪霊を祓い、補助監督と合流する
高専へ戻ってきた頃には、空は夕焼けに染まり始めていた

校舎には生徒が数人いるだけ
静かな夕方だ

…悟…大丈夫かな
自然と、その名前が浮かぶ
事務室で任務報告書を提出する
「お疲れ様でした」
職員の声に頭を下げ、部屋を出た


途中で立ち寄った売店で買った、冷却シートとスポーツドリンクを持って寮へ向かう

「…使わなかったら、それでいいし」
と、誰に聞かせるでもなく呟き五条の部屋の前に立った
コンコン…ノックをする
「悟?」
返事はない
もう一度
「悟~」
静まり返った廊下に、ノックと紅海の声が小さく響く
寝てる…?
少し迷ってから、ポケットから携帯電話を取り出した
連絡先の一覧
《 五条 悟 》
その名前を押す
数回の呼び出し音

「もしもし?」
掠れた声が聞こえた

良かった…と、紅海の肩から力が抜ける
『悟…大丈夫?今どこ?』
少し間が空いて
「…外」
『外?』

「自販機のとこ」
それだけ言うと、通話は切れた
『え…?』
紅海は携帯を握り直す
外の自販機

駆け出して、まずグラウンド脇の自販機を確認する
いない
『悟?いる~?』
辺りを見回しても姿はない
じゃあ、あっちかな…と
そのまま校舎の裏へ回る
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