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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第38章 お粥と意地


京都からの帰りの新幹線

隣の席で、紅海は寝ている
ほんと、紅海はすぐに熱出したり大怪我したり…

ふと五条は思い出す
「ああ…でも、僕も一度だけ、紅海に看病されたっけ」

____十数年前

午後の日差しが、呪術高専のグラウンドを白く照らしていた
訓練場の中央では、五条悟と紅海が向かい合っている
「始め!」
夜蛾の合図と同時に、紅海が地面を蹴った
低い姿勢から一気に間合いを詰める
右からの蹴り…そして、左へ流れるように体勢を切り替え、そのまま回し蹴りへ繋げる
しかし、そのどちらも五条はかわす
「当たんないね」
軽口を叩く声はいつも通り

だが………遅い?
紅海は小さく眉を寄せた
いつもの悟なら、自分が動く前に反応して
攻撃を受け流しながら余裕で笑い、隙を突いて反撃してくる

だが、今日は違う
防げているが反応が半拍だけ遅い
一瞬の違和感

紅海はそれ以上考えず、連撃を続ける
拳、蹴り…宙返りから踵落とし
無下限呪術に阻まれるたびに空気が震え、砂埃が舞う
五条は避けない…避ける必要がないからだ

だが、呼吸だけは少しずつ荒くなっていた
「……っ」
息を整える音が、わずかに漏れる
その瞬間
「五分経った! やめ!」
夜蛾の低い声がグラウンドに響いた
二人は距離を取る
紅海は肩で息をしながら、タオルを首へ掛けた
五条も額の汗を腕で拭う
その横顔を見て、紅海は足を止めた
……息が荒い…
悟がこんな程度の実技で?

『悟?』
「ん?」
『どこか調子悪い?』
「……大丈夫」
即答、事実を隠すように返事が妙に早い
紅海は首を傾げる
「ほんと?」
「ほんと」

紅海が近づくも五条は動かない
彼女は自然な仕草で、そっと手を伸ばした
「熱があるんじゃ――」
ひやり、と額へ触れた瞬間
ぱしっ
「やめろ…」
反射的に、五条がその手を払った
短い音がして、紅海の手が宙へ弾かれる

一瞬だけ、空気が止まった
「あ……」
紅海は驚いたように手を引っ込める
「……ごめん」
小さく謝る

五条は視線を逸らした
「……いや」
それだけ言って、タオルを肩へ掛けどこか居心地が悪そうに歩き出す
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