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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第37章 都と帳


『保田さんの処分は……』
老人は表情を変えなかった
「まだ決まっておらん
それに、その件をお前へ話す理由もない」

声音は冷たいが、感情的ではない
学長として線を引いている

紅海は小さく俯く
「…はい、すみません」

楽巌寺はそれ以上何も言わず、杖を鳴らして廊下の奥へ去っていく

静寂だけが戻った
やがて五条が軽く息を吐く

「行こっか」

紅海はもう一度だけガラスの向こうを見る

眠ったままの保田
規則正しく鳴る心電図

がんばって…

紅海は小さく呟いた

二人は並んで医療棟を後にする、足音が、やけに静かだった


廊下を歩いていると、前方から見慣れた機械の身体が近付いてきた
「……流鏑馬先生」
紅海が足を止める
「あ、メカ丸くん…その後、大丈夫だった?」
事件の最中、体調不良を訴え戦線を離脱した生徒
そう報告されている

メカ丸は小さく頷く
「ええ…もう問題ありません」

しかし、その声にはどこか迷いがあった
少し間を置いてから口を開く
「少し…お時間をいただけませんか?」

紅海が戸惑ったように五条を見る
「あ、えっと…」

監視対象であることは、生徒たちには伏せられている
紅海が勝手に一人になることはできない

五条は紅海の耳元へ少しだけ身を寄せた
「いいよ」
小さな声で囁く
「その代わり、僕の見えるところでね」
「…うん」
紅海が頷くと、五条は廊下の壁へ寄り掛かった
「行っといで」
その視線だけは二人から外さない
      
医療棟の端
自動販売機の横に置かれたベンチへ腰を下ろす
少し離れた場所には五条が立っている
こちらへ顔は向けていない…だが、その六眼は周囲すべてを捉えていた

紅海が柔らかく笑う
「どうしたの?
もしかして、まだ体調悪い?」

メカ丸は首を横に振る
「……いえ」
短く答えると、小さく折り畳まれた紙を取り出した
「あの呪詛師……」
紅海の表情が少し曇る

「腕を失ったと聞きました」
静かに紙を差し出す
「俺が信用している技術者です」
紅海は紙を受け取る
「技術者?」
「はい」
「傀儡を製作しています」
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