第37章 都と帳
「ホテル決まったら、場所送ります」
伊地知が言う
「うん、よろしく」
遊佐は紅海へ視線を戻した
「紅海ちゃん乗れる?」
『……うん』
返事はしたものの、足元は覚束ない
遊佐が支えようと一歩踏み出す
しかし、その前に五条が自然と紅海の腕を取った
「ほら…ゆっくりね」
『……ごめん』
「だから何で謝るの」
紅海は少し困ったように笑う
『……迷惑、かけてるから』
五条は少しだけ眉を寄せる。
「迷惑とか考えなくていい…今は歩くことだけ考えて」
その言葉に、遊佐は何も言わず後部座席のドアを開ける
紅海は朦朧とする意識のまま、小さく頷き、車へ乗り込む
ドアが静かに閉まる
エンジンがかかると同時に、紅海はシートへ身体を預け、そのままゆっくり目を閉じた
京都市内のホテル
車がエントランスへ滑り込む頃には、紅海の意識は熱に浮かされ始めていた
身体が重い
頭がぼんやりする…
遊佐と悟が車の中で何か話していた気がする
ホテルがどうとか…部屋がどうとか
──まぁ、いいか
そんなことを考えているうちに、車は止まっていた
「紅海ちゃん、着いたで」
遊佐がドアを開ける
『……うん』
返事はしたものの、身体は思うように動かない
シートから立ち上がろうとした瞬間、ふらりと身体が傾いた
「危な…」
五条が当たり前のように腕を支える
「歩けんの?」
『……………
……歩ける……』
「その間が怪しいんだけど」
そう言って笑いながらも、肩へ回した手は離さない
ホテルのスタッフが驚いたように頭を下げる横を、三人は静かに通り過ぎる
エレベーターから降り廊下の突き当たり
伊地知が手配した部屋だった
五条がカードキーをかざす
ピピっと電子音が鳴る
「紅海の部屋はこっちね?」
一枚の扉を開ける
続けて、隣の扉も開けた
「で、僕はこっち」
『……うん』
紅海は数歩歩いてから、不思議そうに振り返る
『……うん?』
部屋の奥
内側にも扉がある
『あれ…部屋……繋がってる?』
「そ、コネクティングルーム…
何かあってもすぐ行けるからね」
『へぇ……すごい、こんなお部屋あるんだぁ……』
妙に感心したように頷く
五条は苦笑した
「そこで感心するんだ?」