第37章 都と帳
『だって昔から私にとって悟は、悟だから…』
五条は吹き出した
「あははは!聞いた?直哉?僕『悟は悟』らしいよ」
直哉は小さく舌打ちする
「知らんわ」
そう言いながらも、視線は自然と紅海へ向いてしまい目が合う
「何?言いたいこと有るん?」
見下ろされた、紅海は困ったように笑う
話を変えようと思ってたことを口に出した
『そうだ…前から、大きな任務で一緒になってた事もあって、一方的に、禅院くんの事は知ってたんだけど』
五条と直哉は黙って聞いている
『悟と仲が良かったの見てて…もし禅院くんが高専へ入ってたら、私達も友達になれたルートの世界線が、あったのかなぁって…そう思ったら、ちょっと残念だな…って』
嫌味も皮肉もない
ただ、本心だけを話している様に見える
直哉は思わず言葉を失う
……何やコイツ…
反発してくると思った
怯えたり、媚びると思った
戸惑いを隠すように声を張る
「はぁ?高専?あんなもん、呪術習うための学校やろ
未熟者が行く場所や…完成された俺には必要なかっただけや!何でわざわざ仲良しゴッコせなあかんねん!」
紅海は少し驚いたように瞬きをすると
残念そうに、へにゃっと笑った
『そっか、ごめんなさい』
直哉は眉をひそめる
…何やねんさっきから
何なんや、こいつ
女の癖に!
胸の内でそう吐き捨てても
その言葉だけでは片付かない違和感が残る
……気色悪い
理解できない、何かが残る
そのへにゃっとした笑い方
少し抜けた返事
どこかで見た気がする
幼い頃の記憶…一瞬だけ、幼い少女の声が頭を掠めた気がした
……違う…あんなん昔の話や
それでも
胸の奥に、小さな引っ掛かりだけが残っていた
だから、視線が離れない
その様子を、五条は横目で見ていた
あーあ…と、心の中だけで肩を竦める
これ以上、変なのに興味持たれないでほしいんだけど
表情は変わらない、むしろ笑っている
内心では少しだけ面倒になっていた
紅海って、こういうの気付かないからなぁ
少し離れた場所では遊佐も、その視線に気付いていた
……これ以上、紅海ちゃんに興味持つ人間、増やさんといてほしいんやけど
小さく息を吐く
紅海は、人を疑うことを知らない
だからこそ興味をもつ人間が増える
遊佐は視線だけを直哉へ向けた……