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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第2章 熱と再会


夜の京都は、東京よりも暗い。
街灯の間隔が広く、その分だけ影が濃い。
五条悟は、玄関前で立ち止まった。

ドアのぶに手を掛けると鍵は掛かっていない
「……」
靴が一足、乱れている。
その先。
玄関の冷たいタイルの上に、 紅海が倒れていた。

鍵を開けて、その後、倒れたのだろう
途中で力が抜けたみたいに、横向きで、膝を少し抱えた姿勢。
頬が床に触れている。
「……ばか」
声は低く、ほとんど息だった。
しゃがみ込んで、肩に手を伸ばす。
触れた瞬間、はっきり分かる。異常な熱。
「……40度どころじゃないな」
返事はない。
呼吸は浅く、規則的だけど弱い。
五条は一瞬だけ逡巡してから、 紅海の身体を抱き上げた。
軽い。
高専時代より、確実に。
「……ちゃんと食ってんのかよ」
答えはない。
寝室まで運ぶ途中、 紅海の額が五条の胸元に当たる。
熱が服越しでも伝わる。
ベッドに下ろし、布団をかける。
その動きは丁寧で、任務中より慎重だった。
濡らしたタオルを用意し額に乗せる。
首筋にも買ってきた冷却シートを貼る

紅海が、うっすらと眉を寄せる。
『……ん……』
掠れた声。
『さと……る……?』
名前を呼ばれた瞬間、
五条の手が、ほんのわずか止まる。
「はいはい、幻覚じゃないよ」
軽い調子で返す。
いつもの五条悟の声色。
朦朧とした意識の中
『夢じゃ…ない?』
「夢ならもっと都合よくしてる…」
紅海は、安心したのか力が抜ける。
それでも、微かに眉が下がった。
『…来なくて…いいのに…』
「誰が呼んだの?」
『…迷惑…かけてゴメン…』
五条は、タオルを取り替えながら、淡々と言う。
「迷惑なら、玄関先で倒れない」
紅海は小さく笑おうとして失敗する。
『ごめ…私のこと…おぼえてて、くれ…たんだ』
「は?」
五条は眉を寄せる
確かに、 紅海とは何年も連絡を取っていなかった。
「とにかく、謝る元気あるなら、寝ろ」
言い方は乱暴だが、声は低く抑えられている。
紅海の呼吸が少しだけ落ち着いていく。
五条はベッドの横に腰を下ろし、暫く、その寝顔を見ていた。
高専を出て離れた、それでも消えなかった存在。
「…忘れるわけないだろ」
それは独り言。
紅海には、届かない。
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