第9章 嘘と観光
指定された時間より、少し早く着いた五条
駅前の人波をぼんやり眺めながら、腕時計を一度だけ確認する
―来た
駆け足で…
すぐに、それが 紅海だと分かった
けれど、近づいてきた姿を見た瞬間、言葉が喉で止まる
ほんのりメイクをしていてる、
いつも一つにまとめている髪はほどかれ、肩に落ちていて
グレーとブラックでまとめた年相応だが可愛い装い
起毛感のあるグレーのジャケット、真っ白なブラウス
膝上丈の黒いスカートに、濃灰のタイツ
足元はショートブーツ
見慣れているはずの 紅海なのに
どこか決定的に違う
硝子のやつ、ミニスカート選びやがって…
紅海のクセに可愛い…
「……」
五条は、ほんの一瞬だけ黙った。
「馬子にも衣装?」
沈黙をごまかすように、いつもの調子で口にする。
『あ~もう!やっぱり言うと思った!恥ずかしい…』
紅海は少し照れたように笑い、手で髪をすく
『いいよ、私はこの街に馴染んでいれば』
「何だよ、その逃亡者みたいな台詞は!」
紅海の発言はたまに天然だ
『悟は普段着なのに様になってて羨ましいよ
それに、いつもと違って視線が合うのが嬉しい』
五条は、いつもの目隠しはせずに、サングラスだ
白いTシャツにジーパン、フードにファーが付いている黒のジャケット
どんな服装でも五条は目立つ
「まぁね、僕、カッコいいから」
軽く言ってから、さらっと付け足す
「 紅海待ってる間の5分くらいでさ、何人かにスカウトされた
あと、ほら…」
周囲の視線を示すように顎で示すと、確かに何人かの女性がこちらを盗み見ているので、手を振ってみる
手を振られた女性達は「キャー」とかなんとか言っている
「ほらね?アイドル並みじゃない?僕のイケメンぷりは幾つになっても変わらない、いや進化してるかも!」
悟って本当に子供みたいに自慢したがる…
そこが悟のポジティブで良いところなんだよなぁ
私に無い部分…すごく憧れる部分…