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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第2章 熱と再会


呪術高専東京校 医務室

バイブ音、スマホ画面には『 紅海』と表示されている。

電話口の向こうで、家入硝子は一瞬だけ息を止める。
流鏑馬 紅海( やぶさめ こうみ)
硝子と高専時代同期の呪術師
彼女は高専を卒業し配属先が京都になり、最近教師の資格も取ったらしい
卒業から5年経ち
彼女から最後に連絡が来たのは今年の正月
『あけましておめでとう!またランチ行きたいね!』
いつもの年始のご挨拶
お互い忙しいので行く機会もなかった

珍しいと思い電話に出る

『ぁ、硝子?ごめんね、久しぶり…何かさ40度…熱でて…
フラフラで…えへへ、ごめん…電話しても意味ないのに…
ちょっと心細くなっちゃって……ごめん』

雑音混じりの通話越しでも分かる。声が熱に溶けている。
「……40度?  紅海、病院は」
『行けたら行ってるよぉ…歩くと、視界ぐるんってする…』
軽く笑おうとして、失敗した声音。
硝子はペンを置く。仕事が詰まっている。そして東京から京都は遠い。
「無理すんな。今すぐ横になれ。水は?」
『ある…たぶん…』
「“たぶん”…スマホすぐ出れる様にしてて。鍵は?」
『閉めてる……』
硝子は視線を上げる。

申し送りで、その場にいた五条悟と目が合う。
硝子は端的に言う。
「京都。高熱。独り」
五条は、ほんの一瞬だけ眉を動かす。

「紅海、聞こえる?」
『……ぁ、悟?』
名前を呼ばれたことに、五条の表情がわずかに歪む。
懐かしさでも喜びでもない。厄介な感情が駆け巡る。
「今から行く」
『え…来なくていいよ…京都だよ…悟、忙しいでしょ…』
「行くよ」
即答だった。
理由を言語化すると、自分でも面倒になるから考えない
「鍵は開けられる?」
『…たぶん…でも、迷惑…』
「迷惑なら切る」
『やだ……』
弱い声で否定する。
五条は硝子に視線を投げる。
「位置情報、送らせて」
硝子は頷き、電話口に向かって言う。
「 紅海、今から言う通り操作しな。悟が行く。ごめん私はいけなくて」
『…うん』
少し間があって、ぽつりと零れる。
『ありがと…』
通話が切れた。

五条は上着を掴み独り言みたいに言う。
「……相変わらず、頼るの下手くそすぎだろ」
それは責めでも愚痴でもなく、
長い間、胸の奥に沈めてきた事実の確認だった。
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