第22章 ブーケと夢の国
呪術界の変革が必要…
そのためにも、強く聡い仲間を作る
それが今の自分の仕事だ
家の存続だの、縁談だの
そんなことを考えている余裕はない
余裕があったとしても、優先順位はずっと低い
その翌日
五条にしては、珍しく昨日の事を引きずっていた
高専の廊下で、五条は頭を掻いた
「あ~!も~!なんだよ!
他にも考える事、山ほどあんだって!」
叫んだ瞬間、廊下の奥で影がびくっと跳ねた
「ひぃっ」
書類を抱えた伊地知潔高だ
五条は一瞬ぽかんとした
「…あ」
伊地知は慌てて頭を下げる
「す、すみません!」
「いや伊地知のせいじゃないって」
五条は天井を見上げたまま、ぽつりと言った
「なんか前にもこんな事あった気がするんだけど」
五条は伊地知の肩に手をかける
「ちょっと飲みに付き合えよ」
伊地知は目を丸くした
結局、伊地知も五条も残っていた仕事を片付けてから出る事になった
小さな居酒屋に入る、先に来ていた伊地知と合流
席に座ると、伊地知がメニューを差し出した
「何にします?」
五条はすぐ言う
「とりあえず、ジンジャーエールで」
気持ちビールの色に近いのにするんだ…とか思いながら
伊地知は慣れた様子で注文する
伊地知はビール
五条はジンジャーエール
ストローをくるくる回しながら、五条が言う
「そういえば、誰か来るって言ってなかった?」
伊地知は頷く
「ええ、途中でお会いしたので…もう少ししたら来るかと」
その時、背後から落ち着いた声がした。
「はい、呼ばれました」
振り向くと、そこに立っていたのは七海だ
スーツ姿のまま席に着く
「…お、七海、結婚式どーだった~?」
わざと、茶化す
「さほど興味がないのに話を振る意味が解りません」
五条は肩をすくめる。
「いや意味はあるだろ、興味は無いけど…」
無いんだ…と伊地知は心の中で突っ込む
七海は静かに酒と焼き鳥を頼む
店のざわめきが席の周りに流れている
しばらくして、五条が何気なく言った。
「そういえば、紅海も楽しそうだったよねブーケ貰ったとかなんとか?」
七海の横で、花束を抱えて少し照れていた紅海を思い出す
「そうですね…楽しそうでした
流鏑馬さんは、結婚式に参列するのが初めてだったそうです…」
その言葉の後、少しだけ沈黙が落ちる
昨日、紅海が笑って言った
――幸せそうだった
