第22章 ブーケと夢の国
高専時代を思い出しながら一口ジュースを飲む
ハッとした顔をして紅海は訂正する
『別に怒ってるとかじゃないよ?拗ねてるとかでも…
悟は昔から忙しい所有ったし、私より傑や硝子の方が仲良かったしね?』
硝子は紅海をじっと見た
紅海は昔からそうだ。
自分の事になると、何故か妙に評価が低い
「まぁ五条もめんどくさいヤツだからね
心配してても、普通の言い方しないし」
あの男は感情を正面から扱うのがあまり得意ではない
茶化すか、距離を取るか、極端だ
紅海は「そっかぁ」と小さく笑った
少し空気を変えるように、ふと思い出した顔をする。
『そう言えばさ』
「ん?」
『今度、結婚式に呼ばれた』
硝子が眉を上げる
「結婚式?」
『うん』
『太田さんって人』
「太田さん?」
紅海は思い出しながら言う
『えっと…前に社会勉強で七海に紹介してもらった人』
紅海が以前、社会勉強として普通の社会人と話してみたいと言ったことがあった
呪術師だけの世界は、どうしても閉じている
太田は、年上の女性で、明るくて面倒見が良い
紅海を年下の妹のように可愛がってくれている
『たまにLINEしててさ』
紅海はスマホの内容を思い浮かべながら言う
『結婚することになったんだって』
「へぇ」
硝子は素直に感心する
『それで式に呼んでくれて…
で!私、結婚式って初めてで』
言葉が少し小さくなる
『だからさ』
少し身を乗り出した
『硝子、一緒に服選んでくれない?』
拍子抜けした顔の硝子
そしてすぐ笑う
「いいよ、じゃ、行く?」
あっさりした返事
紅海の顔がぱっと明るくなる
その表情を見ながら、硝子は内心で思う
紅海は、普通の世界を大事にする
それはきっと…
呪術師として生きていると、簡単に壊れてしまうものが多いからだ
硝子はコーヒーを一口飲んだ
紅海は楽しそうに式の話をしている
ご祝儀袋は可愛いのが良いかとか、メイクやヘアセットはどうしよう?とか
けれど硝子は知っている
紅海は時々、幸せな話をする時ほど、ほんの少しだけ遠くを見る
自分が幸せに触れてはいけないような…
それは昔から変わらない癖だった