第21章 隣と桜
それから、放課後
職員室にて、五条が紅海を待っていた
「紅海、復帰祝いしてあげるよ!何食べたい?」
『え?本当?悟が?嬉しい!じゃあ、お好み焼き!』
即答だ
「良いね~。粉ものは正義だよ」
『誰か呼ぶ?硝子とか、七海とか……』
紅海は自然に言った…別に特別な意味はない
皆で食べに行くのが楽しいかなと思ったからだ
だが五条は、ほんの一拍、間を置く
「いや、僕、2人が良いな」
空気が少しだけ変わる
紅海は瞬きをする
『……そっか、解った』
2人が良いな?
理由を探してしまう
五条は視線を外し、歩き出す
「ほら、行くよ〜、店混む前に」
―――
2駅離れた、小さなお好み焼き屋
自分で焼けるのが、紅海のお気に入りらしい
鉄板の熱気、ソースの甘い匂い
二人は向かい合って座る
『わたし、お好み焼き作るの好きなんだ…任せて!』
「焦がすなよ?」
『いや焦がさないし』
粉とキャベツを混ぜる
鉄板に落とすと、じゅ、と音が立つ
「療養中、ずっと家いた?」
軽い声
『まぁ……ね、映画見たり…買い物には出掛けたけど』
曖昧だ
「考えすぎた顔してる」
『してないよ』
「してる」
視線がぶつかる
紅海は、ふっと笑う
『怪我ばっかりだなって、不甲斐ない弱いなって、ちょっと思っただけ』
鉄板の音だけが続く
五条はコテを持ったまま、少しだけ視線を落とす
「怪我が多い=弱い、は短絡的すぎない?」
さらりと言う
『でも、無傷の人もいっぱいいるでしょ』
「僕を筆頭に?」
紅海は何も言わない
五条は肩をすくめる
「僕基準にするの、だいぶバグってるよ」
鉄板の縁を軽くコテでコツコツ叩く
「複数に囲まれて、呪力止められて、生き残ってる時点で評価は高いんだよ…しかも、相手は屈強な男たち!だったんでしょ?恵が言ってた」
紅海は顔を上げる
「分が悪い戦いをしてるだけだよ、
弱いなら、そもそも生きて帰って来れてない」
紅海の胸の奥で、何かが少しだけ緩む。
『……悟は、ずるいよ…』
「何が?」
『強いくせに、弱いわたしの事、ちゃんと見てる』
「だから、弱くないんだってば」