第20章 重傷と記録
戻ってくる
来た
みぞおちに掌を当てて出来るだけの呪力を込める
弾くように、圧縮した呪力を一気に叩き込む
衝撃で相手の体がくの字に折れて数メートル吹き飛ぶ
沈黙
『っはぁ……はぁ……』
終わった…多分
足元は血でアスファルトが濡れている
視界が揺れて、ふらつく
結界が解けて伏黒が駆け込む
「先生!!」
紅海は笑おうとするが苦しそうだ
『……ちょっと、油断した……』
その声はかすれている
「何で、先生が狙われてるんだ」
伏黒は杭に視線を落とすと怒りを感じた
高専、医療室
対応しているのは 家入硝子だ
海外から帰ってきた五条が硝子から知らされる
「は?」
聞き返したというより、理解を拒否した響き
「だから、また、紅海が襲われたんだって」
硝子は淡々としているが目は笑っていない
「でも、大丈夫だったんだろ?」
わざと軽い調子で、そうで有って欲しいと問う
「命に別状はない……とだけ言っておく」
その一言で、目隠しでも解る程、五条の顔が真剣になる
勢いよく、治療室の扉が開く
『わ、なに?』
ベッドの上で上体を起こしていた紅海が驚く
病衣の間から、少し血が滲む包帯がチラリと見えた
五条は一瞬、無言になる
呪力の流れが整っていない事が五条には解る
「……派手にやられてるじゃん」
わざと軽い声
『ちょっと油断しただけ』
「ちょっとで、そんな刺される?」
硝子が口を挟む
「無理させるなよ、傷は塞いだが、呪力の流れが乱れてる…数日は安静」
「解ってるよ」
『悟、心配しすぎだよ』
「してないよ」
即答…だが嘘だ
「たださ、僕の知らないとこで、勝手に血まみれになってる事に腹がたっただけ」
『ははっ、ゴメン』
「違う…紅海に怒ってんじゃないよ」
最強の男が、守れなかった事に苛立っている
そして、紅海が自力で戦い抜いたことに、複雑な感情を抱いた
誇り、安堵、嫉妬、怒り
全部混ざっている
彼はゆっくり、ベッドの縁に腰掛ける
「紅海…」
視線が合う
次、こういうのあったら
僕、呼んでよ」
紅海は口を開いた…
 ̄ ̄ ̄ ̄
薄暗い事務室にパソコンのモニターの光がひとつ
机に肘をついているのは 五条悟
モニターには、任務記録、戦闘記録のページが開かれている
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