第4章 東京とおたべ
五条は、少し離れた場所で腕を組んだまま
ただ、視線だけで追っている
数体の呪霊が最後の抵抗で突進する
紅海は即座に地面に手を触れた
次の瞬間、足元の地面が跳ね上がり、呪霊を包み込むように潰す
静寂
紅海は小さく息を吐き、構えを解く
『…ふぅ』
その背後で、五条が口角を上げた。
「相変わらず、詠唱も掌印も無くてその威力、派手じゃないのにえげつないねぇ」
『え、そう?』
五条は、少しだけ目隠しの奥で目を細める。
呪霊が完全に祓われ、帳が消えていく
紅海が息を整えている間に、五条は自然な動きで散らばった荷物を拾い始め紙袋をまとめ両手に持つ
その背中を見て、 紅海は少し目を瞬かせる
『え、何? 悟、もしかして迎えにきてくれたの?
古巣に帰ってきたって感じなんだよ? なれてるから良いのに』
五条は振り返らずに荷物を持って歩きだす
「忙しい僕が自ら迎えを申し出たんだよ? ありがたく思いなよ」
『ふふっ、ありがたやぁ~』
紅海が荷物を持とうと手を差し出すと、軽い紙袋だけ返された
五条は内心、後ろめたいものを感じていた
数ヵ月前に自ら手を掛けた同期の顔が脳裏に浮かぶから…
気取られ無いように普段の五条悟を演じる
『悟…』
紅海は少し首を傾げ、五条の顔をまじまじと見た
『なんか、性格、少し丸くなった?』
五条は一瞬だけ間を置いて、いつもの調子に戻す
「そうだね、これでも、僕、大人になったからねぇ」
『ぶっ、何それ。私もだよ……同い年でしょ?』
五条は、 紅海を上から下まで一度だけ見て、さらりと言う
「 紅海は変わってないよ」
『あ、精神年齢変わってないみたいな意味でしょ~! もぉ』
わざと拗ねた声
五条は肩をすくめる
「変わってるとしたら…ちょっと痩せた?
社畜精神で働いてるんじゃないの~?」
京都の呪術師界隈こわーい!と、からかわれる
『そ、そんな事無いよ!』
その反応が、あまりにも昔と同じで
五条は、心の中でだけ息を吐く
変わってないよお前は…
自分だけが、取り返しのつかない場所まで来てしまった様な錯覚すら覚える
「ま、とりあえず行こ。立ち話するには寒いからさ」
『うん』
紅海が小走りで五条の横に並ぶ
お互い高専時代の懐かしさを感じた