第4章 東京とおたべ
東京校最寄りの駅
改札を抜けた瞬間、 紅海は小さく息を整えた
両手は塞がっている。大きな荷物に紙袋、肩にも鞄
『…戻ってきた』
呟いた、その瞬間
周りの空気が、歪んだ
視界の端、ぞわりとした嫌な気配
反射的に足を止めるより早く、影が地面から這い上がる
『っ……またかぁ』
昔からだ
紅海の桁違いの呪力は、他の呪術師と違い
灯りみたいに呪霊を呼ぶ
舌打ちする暇もない。
荷物を放り投げるように足元へ滑らせ半歩下がる
とにかく帳を
そう思った時
視界が暗転した
滑らかに、完璧なタイミングで帳が下ろされた
『…え?』
次の瞬間、余裕のある声が聞こえる
「到着早々、何やってんの?」
長身、白い髪、ふざけたほど軽い立ち方
ん?
黒い目隠し?
『……え? ん? 悟? イメチェン?』
「そー、イメチェン。
何しても格好いいの駄々もれてるでしょ?」
なぜかピースで肯定する男――五条悟
昔と変わらない余裕
『え!?目悪いの!?見えてる?大丈夫!?』
「逆!逆!良すぎて困っちゃうくらい!」
『なら良いんだけど…』
良いんだ…
2人は呪霊を無視して話し始めるが
呪霊が空気を読むはずもなく 紅海に襲いかかる
五条は助ける事なく遠くから紅海に叫ぶ
「まぁ、まずは 紅海のお手並み拝見。無理になったら僕が祓ってあげるよ!」
『ありがと!でも大丈夫!』
紅海は一歩前に出る
指先に、静かに呪力を集め
ぴり、と空気が鳴る
彼女の術式は単純だ
触れるものに呪力を流し込み操る
呪力の調整は必要だが万能
紅海らしく人に迷惑はかけない物を選ぶ
だから選ぶのは――
地面。
低く構え、手のひらを地面に当て呪力を流す
足元の小石が、震えた。
砂利が、意志を持ったように浮かび上がる。
呪霊が跳んだ瞬間、 紅海は指を弾いた。
石礫が弾丸のように放たれ、呪霊の腕がちぎれる
しかし呪霊の勢いは止まらない
呪霊の攻撃を軽く交わしながらバク転した時に付いた両手で
呪力を地面に流し込む
小石が散弾銃のように呪霊の腹部を貫通
呪霊が悲鳴を上げる
紅海の指先が舞うたび、自然物が武器へ変わる
小石、砂、割れたアスファルト
数体の呪霊をほんの数分で祓い終わった
触れられる全てが彼女の支配下だ