第17章 孤高と孤独
ファミレスでたっぷりデザートを堪能した4人は
高専寮へ帰る道、何でもない話をして盛り上がる
任務後の疲労と、ファミレスの甘い匂いがまだ残っている
「それ、明日までに制服乾く?」
硝子が隣を歩きながら言う
紅海は袖をつまむ…シミ出来るかな…と
『まぁ、乾かなかったらジャージ着るしね』
あはは、と軽く笑う
硝子も肩をすくめ
前を歩く悟と傑はどうでもいい言い合いをしている。
「だから青汁の割合がおかしかったんだよ」
「どちらかと言えばミネストローネじゃない?」
油断するには十分な、平和だ
その瞬間…ふ、と
視界の端で、紅海の呪力がわずかに揺れた気がした
硝子が横を見る
いない
「…紅海?」
風が、建物の隙間へ吸い込まれた
細い路地裏は
生温く、腐った匂がする
『っ!!』
反応が一瞬遅れた
ヘドロのような呪霊が、音もなく身体中に絡みつく
重く粘つき冷たい
全身を包まれ、視界が暗くなる
息が吸えない
いつもなら呪霊の気配に気を付けていた
小さい頃から何で自分を襲ってくるのかも解らない
けれど襲ってくるんだから、しょうがない…
だから常に気を張ってきたのに
でも今日は、一人じゃなかったし楽しくて気を抜いた
単純に油断した
『ん、っ…ぷは!』
一瞬、顔が上がり空気が入る
すぐにまた飲み込まれる
指先に呪力を込めるが
ぐにゃり、と感触はあるが貫けない
集中ができない…視界が狭まる
どうしよう
このまま、窒息して
脳裏に、誰かの、さっきの声
“大丈夫、ばっか言ってんじゃねーよ!”
“人に気使って強がんなよ!”
私、強がってたのかな…
助けてって呼んだら、助けてくれるのかな
顔がまた上がる
『しょ…しょーこ…たすけ…っ』
飲み込まれる…声にならない。
その瞬間
「流鏑馬!ちょっと構えろ!」
路地裏に、鋭い声
五条くん…
次の瞬間
呪霊が弾け飛んだ
紅海ごと飛ばされる
ヘドロが四散し、壁に黒く飛び散る
紅海は地面に転がる
『っ!はぁ…はぁ…』
肺が痛い息をするのが気持ち悪い
視界が揺れる中、サングラス越しの瞳がこちらを覗き込む
「よし、生きてる」
「悟、いくら流鏑馬さんを信用してるからって、荒すぎる」
「っせー!緊急事態だろ?
このくらいで済んだんだから良しだろ?」