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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第16章 春休みと経験値


その時、紅海のスマートフォンが震えた
画面には、七海の名前
『あ、七海だ』
画面をスライドさせて通話する
『もしもし?』
「流鏑馬さん、大丈夫ですか? 無事に帰っていますか?」
いつもの七海よりわずかに硬い声
紅海は五条を見上げる
『うん、なんか悟が来てくれた』
一拍の沈黙
電話の向こうで、七海が息を吐いた気配がした
「そうですか…では、問題ありません、安心しました」
通話が切れる

五条は、さっきまでの軽さのまま紅海を見下ろした
そして…
少しだけ声のトーンが下がる
「紅海」
びく、と紅海の肩が揺れる
「気を付けなよ?」
静かな叱責
「距離、近すぎでしょ?」
『え……』
理解が、ゆっくり追いついてくる
ただ、いつもの調子に戻って肩をすくめた。
「世の中、みんな善人とは限んないんだからさ」

街灯の下で、紅海は自分の胸元をぎゅっと押さえていた
まだ、鼓動が落ち着かない

喉の奥で、言葉がほどける
『私、キスされそうになったのかな
いや「かな?」じゃない…よね…』
現実をなぞるほど、背筋が遅れて冷える
『嫌だ、ヤバいって思ったのに…
ビックリして動けなかった…』
自分でも、信じられない

五条の視線が、すっと鋭くなる
「呪霊が襲ってきたら、あんな速度なんてかわせるでしょ
それとも、あの男に、キスされたかったの?」
意地悪な言い方に、紅海の思考がざわつく

『違うよ!』
思わず声が大きくなった

『ビックリして…それに、お友達の感覚だったと言うか
…いろんな話聞けて新鮮だったんだよ…
急に、そんな感じになると思わないでしょ?』
言いながら、自分でも分かる…結局言い訳だ

無防備だった自分が悪い
言葉が、少しずつ小さくなる

五条の眉が、わずかに寄る
本当は、怒鳴りたかった

「僕が来なかったら…」
『……ごめんなさい』
五条の言葉を遮り、紅海は俯き静かに謝る
肩が少し落ちて、反省している

「何で僕に謝るの…」
その様子に、五条はため息を付く
胸の奥で、行き場のない苛立ちが鈍く軋んだ
『悟が来てなかったら…最悪になる所だった…ありがと』

その一言で
五条の呼吸が、ほんのわずか緩む

胸の奥に張り詰めていたものが、静かにほどける
……はぁ
完全に怒りきれない自分に、内心で舌打ちをした
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