第15章 月と袈裟
══閑話══
岩手の病院
少し開いた窓からは爽やかな風が通る
またやってしまった…
領域展開する度に、倒れていては迷惑がかかる
保険金詐偽で訴えられないか心配する
今回、入院になったのは怪我が主で
領域展開の反動は少なく
野薔薇が怪我していないので
この程度ですんだのだろう…との見解
表向きは崖から落ちたことになっているので
医者からは、どうやったら、こんな傷が出きるのか
と、質問責めにあったが
意識が失くなったから解らないで通した
コンコンとノックが聞こえる
『はーい!どうぞ』
重いドアをスライドさせて入ってきたのは
小学生の釘崎野薔薇
「野薔薇ちゃん!」
『紅海ちゃん、もう大丈夫?』
「うん、もう呪力も戻ってるしね」
ドアの向こうから気配を感じる
『え…あ、えっと』
「うちの婆ちゃん…むっちゃ怒られた」
病室に入ってきたのは野薔薇の師匠でもある祖母だ
「うちの孫っこが、ほんにご迷惑かけでしまって
申し訳ねがったです
ちゃんときっつぐ叱っておいだがら
どうが堪忍してけろな」
迫力半端ない!!
うちのお婆ちゃんとは、また別のタイプの師匠!
でも、お婆ちゃんより若いかな?
『あ、いえいえ、とんでもないです
私が野薔薇ちゃんに気付かなかったのが、そもそもで』
野薔薇の祖母は、綺麗に包まれたお菓子を差し出す
「これ、お見舞いに持ってきたもんだがら、どうが食べでけろ」
『いやいや!大丈夫ですってば!本当に野薔薇ちゃんに何もなくて良かったです』
「野薔薇もな、流鏑馬さんみてぇになりてぇ言うて
呪術ば一生懸命学び始めだんだ
ほんにありがてぇごどだ」
野薔薇は、ツンとお婆ちゃんの言葉を聞いている
「紅海ちゃん、退院はいつ?見送りたい」
『ありがと、明後日くらいには退院かな?
一旦東京の実家に帰って、京都に帰ろうと思ってるよ』
東京の言葉に、ホワァっと目を輝かせる野薔薇
「浅葱の姐さんさ、よろしぐお伝えしてけろ
昔、岩手で世話になったって言うてければ、きっとわがってくれっから」
『お婆ちゃんの事知ってるんだ!?
ありがとうございます!伝えておきます』
紅海は頭を下げる
「んだばな、道中気ぃつけで」
じゃあね…と、お婆ちゃんの後を続いて野薔薇も出ていった
少しは役に立ったのかな…と紅海の心が暖かくなる