第18章 迷宮-ザガン-
白龍「民から尊敬されているんですね…。話からすると貴方の国の領土は奪われてますよね。相手を恨む気持ちはないんですか」
・・この人は憎く思わないのか?
レイ「ありましたよ。
でも、行動に起こそうと思ったことはないです。
私が一言、民に反撃の狼煙を上げよ、と命じれば民は動いてくれるでしょう…ですが、それをしたら1番傷つくのは民達です。
戦に駆り出され、多くの命が消えることになるでしょう。
それなら私は他国の地になろうとも民が平和に暮らせるならそれでいいんです。
…誹謗中傷の言葉や視線や言葉を私達王族が聞けば済むならそれでいいんです。
民を護るのか王家の務め、たかが土地で民を危険には晒さない。
というのが私の持論です」
私は真剣な表情で答えた。この思いは記憶を亡くしても私の中にあり続けたものだ。この考えだけは私の中でも普遍なものだ。
白龍「貴方は自分の国が好きなのですね」
・・俺とは正反対だ…。俺は国を潰してでも彼奴を殺したいほどに憎んでいるのだから。
真剣な顔でそう返され、私はハニカんだ。
ここまではっきり言われると照れてしまう。
私も白龍さんに習い、ストレートに聞いてみた。
レイ「白龍さんは、国が嫌いなんですか?」
白龍「…私は嫌いでは無いですが……好きにはなれません」
レイ「嫌いでなければいつか好きになる時がくるかもしれませんね。
私は国民は王やその国の写し鏡だと思うんです。」
王が荒めば国も然り、国が荒めば民にも及ぶ…と小さな声で付け足した。
私は記憶の映像で見た奴隷時代の映像を頭に浮かべながらそう言った。
この後も少し国についてどう思うか、といった事を話した。
お互いの考えを聞いたが異なる所も多く、意気投合といった弾む会話では無かったが私は少し白龍さんが何か大きな闇を抱えているんだと漠然とだが感じ取った。