第4章 同じ時間を過ごす
合宿最終日の朝。
山の空気は、驚くほど澄んでいた。
白井は、演習場に立つ。
体操着の袖を整え、深く息を吸った。
——隠さなくていい。
その事実が、
胸の奥で、ゆっくり広がっていく。
「始めるぞ」
相澤消太の声が落ちる。
今日の訓練は、個性応用の最終確認。
危険な負荷はかけない。
けれど、出し惜しみもしない。
「白井」
呼ばれて、前へ出る。
「昨日までの制御を前提に、
“今できる最大”を見せろ」
「……はい」
返事は、迷いがなかった。
⸻
合図。
白井は、一歩踏み出す。
瞬時に筋力が跳ね上がる。
視界が冴え、音が輪郭を持つ。
——怖さはある。でも、もう恐れない。
白い毛並みが、必要な分だけ腕や脚に現れる。
完全な獣化ではない。
理性は、保たれている。
「……速い」
誰かの声。
地面を蹴り、方向転換。
障害を越え、着地。
判断が、先に走る。
——並べている。
——個性と。
相澤は、頷いた。
「止め時、完璧だ」
評価は短い。
でも、確かだった。