第4章 同じ時間を過ごす
食堂の空気が、自然と静まる。
誰かが言い出したわけじゃない。
ただ、“今は聞く時間”だと、全員が理解した。
白井は、一歩前に出た。
「……相澤先生から、個性の説明はあったって聞いてる」
視線が、集まる。
「だから、重ねて話す必要はないかもしれない、、でも……」
ゆっくり、続ける。
「私の口から、話したい」
相澤は、何も言わずに頷いた。
——任せる、という合図。
「ホワイトウルフは、身体能力を狼のように強化できるする個性」
事実だけを、丁寧に。
「筋力だけじゃなくて、五感も感情が鋭くなる」
「出力を上げすぎると、理性が薄くなってただの大きな狼になる」
昨日、皆が見た通り。
「だから、私は今まで、なるべく使わない選択をしてきた」
否定も、言い訳もない。
「……でも」
声が、少しだけ揺れる。
「ヒーローを目指すなら、向き合わないといけない」
視線を上げる。
「昨日は、その途中だった」
沈黙。
誰も、口を挟まない。
「怖がられるかも、って思ってた」
正直な言葉。
「距離を置かれるかも、って、でも…そうじゃなかった」
白井は、ゆっくりと息を吐いた。
「それが、すごく……安心した」
その瞬間。
「当たり前じゃん」
三奈が、軽く言う。
「個性でしょ?」
お茶子も頷く。
「狼薇ちゃんが悪いわけじゃないし」
「制御中って言ってたしな」
切島が笑う。
「これからっしょ!」
その言葉に、
胸の奥が、じんわり温かくなる。
——ここに、いていい。
初めて、
心からそう思えた。
⸻
少し離れた場所で、
爆豪は腕を組んで立っていた。
何も言わない。
でも。
——ちゃんと、戻ってきやがった。
心操は、
小さく息を吐いた。
——大丈夫だ。
轟は、静かに頷く。
——選んだ言葉は、間違っていなかった。
⸻
朝食が再開される。
白井は、
空いていた席に腰を下ろした。
もう、“空席”じゃない。
ここで一つの答えを出す。
知られても、壊れなかった。
話しても、拒まれなかった。
そして次に来るのは、
“過去を語るかどうか”という、
もっと深い選択。
その時、彼女の隣に立つのは、
誰なのか。
それは、
まだ少し先の話。