第4章 同じ時間を過ごす
翌朝。
合宿所の廊下は、朝の光で満たされていた。
白井は、一度だけ深呼吸をしてから、
食堂へ続く扉を開けた。
——見られる。
——何か、言われる。
そんな予感が、
体の奥に残っている。
けれど。
「……あ、狼薇ちゃんや!!」
最初に声を上げたのは、
麗日お茶子だった。
「もう大丈夫なん!?」
駆け寄ってくる。
「無理してない? まだ休んでてもいいんだよ?」
続いて、芦戸三奈。
「昨日さ、ほんとびっくりしたけど!」
「でもそれより、体は平気?」
「顔色、もう大丈夫なのですか?」
八百万が、落ち着いた声で言う。
誰も、
“怖い”とは言わない。
“危ない”とも、
“近づくな”とも。
白井は、一瞬だけ言葉を失った。
「……うん」
喉が、少し詰まる。
「ありがとう。もう、大丈夫」
それは、
今までで一番、正直な返事だった。
⸻
「おはよう、白井さん!」
明るい声。
緑谷出久が、
ノートを片手に近づいてくる。
「えっと……!昨日の個性、
相澤先生から説明は聞いたんだけど……」
一気に早口になる。
「獣化系の個性で、理性と出力が連動してて、制御が重要でって話は聞いてたんだけど、具体的にどんな個性でどれぐらい身体能力に変化がでるのか、色々聞いてみたくて……!」
一瞬、白井の肩がこわばる。
——質問される。
——見られる。
でも。
緑谷の目には、恐怖も、警戒もなかった。
あるのは、純粋な関心だけ。
——あ。
白井は、そこで気づいた。
この人は、
自分の個性を
“怖がって”聞いているんじゃない。
「……緑谷くん」
声をかけると、
緑谷はぴたりと止まる。
「質問、ありがとう」
緑谷が目を見開く。
「え!? い、いえ……!」
「怖がらないで、聞いてくれたから」
白井は、少しだけ微笑んだ。
「それ、嬉しい」
緑谷は、顔を真っ赤にして頷いた。
「は、はい!
えっと……その……!」