第1章 転入生 白井狼薇という少女
女子が話しかけてる。
囲んでる。
笑ってる。
なのに。
――完全には、入れてねぇ。
それが分かるから、
胸の奥が苛立つ。
「チッ……」
理由は分からない。
分かりたくもない。
ただ、
あいつが誰に対しても同じ距離を保っていることが、
妙に気に食わない。
放課後。
廊下で、白井とすれ違いながら、
蛙吹が静かに言った。
「白井ちゃん。無理しなくていいわ」
白井は足を止め、少し驚いたように彼女を見る。
「……はい」
それだけ。
蛙吹はそれ以上何も言わず、去っていく。
白井は、その背中を見送りながら、
胸の奥で小さく思う。
――距離を取っているのに。
――それでも、誰かが近づいてくる。
それは、
怖くて、
少しだけ――温かい。
白井狼薇はまだ知らない。
A組の女子たちが、
「理由を知らないまま」
それでも彼女を仲間として受け入れようとしていることを。
そしてその優しさが、
彼女自身の選択を、
少しずつ揺らし始めていることを。