第4章 同じ時間を過ごす
白い天井が、ゆっくりと輪郭を取り戻す。
消毒液の匂い。
カーテン越しの光。
白井は、瞬きを一つして、
自分が横になっていることを理解した。
「……起きたか」
低い声。
視線を向けると、
相澤がすぐそばの椅子に座っていた。
「……」
喉が、ひりつき、すぐに声は出なかった。
「無理に話さなくていい」
相澤は、静かに立ち上がる。
「クラスの方は、俺が見る」
カーテンの向こうを一瞥し、
一言だけ付け足した。
「……個性の説明は、俺がした。悪い。」
それだけ。
過不足のない言葉。
「目が覚めたこと、必要なら後で伝えろ」
そう言って、
相澤は保健室を出ていった。
扉が閉まる音が、
やけに大きく響く。
⸻
静寂。
カーテンの隙間から、
夕方の光が差し込む。
「……」
もう一つ、気配がある。
ベッドの横。
椅子に座ったまま、
視線を逸らしている人物。
心操だった。
「……どこまで」
白井は、ポツリ、ポツリと掠れた声で言った。
「……見られた?」
心操は、すぐに答えなかった。
少しだけ、間を置いて。
「個性のことだけだ」
視線を向ける。
「狼になる個性で、それは制御が必要だって」
それ以上、言わない。
「……」
白井は、目を閉じた。
——知られてしまった。
隠してきたものの、
一番外側。
それが、クラス全員の前で。
胸の奥が、静かに崩れる。
涙が、
一粒、頬を伝った。
声は、出ない。
嗚咽も、ない。
ただ、
静かに、落ちる。また落ちていく。
心操は、何も言わない。
ティッシュも、差し出さない。
肩にも、触れない。
ただ、
そこにいる。
それが、
今の白井にとって、
一番必要な距離だと知っているから。