第4章 同じ時間を過ごす
隣で、
轟焦凍が、箸を置いた。
「……俺も、同じことを考えていた」
爆豪が、ぎろりと睨む。
「昨日、“怖くても目を逸らすな”って言った」
轟の声は低い。
「それが、背中を押しすぎた可能性はある」
「……」
二人とも、“励ましたつもり”だった。
前に進め、と。
逃げるな、と。
でも。
——前に進んだ結果が、あれだ。
「……クソ」
爆豪が、歯を食いしばる。
「俺は、止まれるって言った」
でも、
実際に止めたのは自分じゃない。
その事実が、重い。
轟は、少しだけ目を伏せた。
「……だが」
静かに、言う。
「あいつが選んだ一歩だ」
言い訳ではない。
整理だ。
「それでも、何も感じないわけじゃないよな。」
爆豪は、答えなかった。
⸻
同じ頃。
心操は、すでに食堂を出ていた。
食事は、ほとんど手をつけていない。
トレーを返し、
そのまま廊下を進む。
向かう先は、一つ。
——保健室。
「……」
扉の前で、立ち止まる。
小さくノックをして扉を開けた。
中にいるのは、
相澤と、眠っている白井。
——今は、
話す時間じゃない。
それでも。
“目を覚ましたとき、誰が最初にいるか”
それは、きっと意味を持つ。
心操は、静かに椅子に腰を下ろした。
呼吸を整え、
ただ待つ。
⸻
食堂に残された空気は、
少しずつ日常へ戻っていく。
笑い声も、戻る。
話題も、散っていく。
でも、
それぞれの胸の奥には、
同じ感覚が残っていた。
——知らなかった。
——でも、知ってしまった。
白井狼薇の個性。
そして、本人がまだ語っていない“理由”。
それを、聞く資格があるのかどうか。
“共有された事実”のあとに訪れる、
静かな選択の時間へ入っていく。
次に言葉を発するのは、
彼女自身だ。
誰に向けて、
どこまで語るのか。
その瞬間を、
それぞれが、待っていた。