第4章 同じ時間を過ごす
相澤は、捕縛布で白井を包むと、
抱き上げて全員に向き直った。
「今見たのが、白井狼薇の個性――ホワイトウルフだ」
誰も、口を挟まない。
「身体の一部、あるいは全体を獣化させる能力」
淡々とした説明。
「感覚・筋力・反応速度が飛躍的に向上する。がしかし、
その反面」
一拍、置く。
「出力と理性が連動しやすい」
その一言で、空気が少し重くなる。
「制御を誤れば、本人の意思とは無関係に完全獣化へ移行する可能性がある」
ざわり、と息を呑む音。
「だが」
相澤は、はっきりと言った。
「これは“危険な個性”という意味じゃない」
視線が、全員を一度なぞる。
「制御が必要な個性だ。そして、今も制御訓練の最中にある」
事実だけ。
「白井は、自分の限界を把握するために一歩踏み出した」
それを、
“失敗”とは呼ばない。
「今回の件は、教師である俺の管理下で起きた」
責任を、自分に引き取る。
「だから、お前たちは余計な想像をするな」
それ以上は、語らない。
過去も。
理由も。
——個性の説明だけ。
⸻
白井が、運ばれていく。
爆豪は、拳を握りしめたまま、動けない。
「……止められなかった」
誰に言うでもなく、呟く。
心操は、静かに目を伏せた。
——見ていた。
——分かっていた。
それでも、
止める役目は自分じゃなかった。
轟は、相澤の背中を見ていた。
——いつか。
——彼女自身の言葉で、語る日が来る。
今は、その時じゃない。
⸻
白井は、保健室のベッドで眠っている。
何も知らないまま。
でも。
この朝を境に、A組の中で
「白井狼薇の個性」は、確かに共有された。
それは、拒絶ではない。
恐怖でもない。
ただの、事実。
静かな合宿の中で、一つの“真実”を明るみに出した。
次に明かされるのは、
個性ではなく、想い。
それを語るのは、
教師ではなく、彼女自身だ。