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オオカミ少女は愛の夢を見る

第4章 同じ時間を過ごす


狼薇の視界が、一瞬だけ、白く揺れた。

「……っ」

体の奥で、“何か”が反応する。

心操の個性が、
白井の意識に触れた、その刹那。

——見えてしまった。

ほんの一瞬。
一秒にも満たない。
でも確かに。

白い獣の影。
人の輪郭をなぞるように浮かぶ、
理性を失った“別の姿”の断片。
耳が逆立ち獣のような…

「……っ!?」

心操が、息を呑む。
「今の……」

白井は、すぐに一歩下がった。

「……ごめん。今日は、ここまでにしよう。組み手とかに切り替えて。」

声は、落ち着いている。でも、どこか硬い。

「……白井」

心操は、それ以上踏み込まなかった。
踏み込めなかった。

——見た。

確かに、見た。

だが、問い詰めていいものではないと、
直感で分かってしまった。

「……大丈夫だ」

白井が言う。

自分に言い聞かせるように。

「少し、反応が強かっただけ」

嘘ではない。
でも、真実でもない。



少し離れた場所。

爆豪勝己と
轟焦凍は、
それぞれ別の課題に向き合っていた。

爆豪は出力制御。
轟は同時使用の精度。

二人とも、
本当は様子を見に行きたい。

だが。

「……今は、こっちだ」

轟が静かに言う。

「自分の課題を優先する」

爆豪は舌打ちする。

「わぁーってる」

分かっているからこそ、
苛立つ。

——近くにいるのに、
——踏み込めねぇ。



その夜。

心操は、
一人で空を見上げていた。

——見えてしまった。

白井狼薇の中にある、
“制御を失った個性の影”。

それは、
恐怖というより——

「……覚悟の問題、か」

誰にも聞こえない声で、そう呟く。

一方で狼薇は、
宿舎の自分の布団に横になり、
目を閉じていた。

——見られた。

全部じゃない。
でも、片鱗は。

それでも。

逃げたいとは、思わなかった。

静かな成長であると同時に、
隠してきたものが、少しずつ輪郭を持ち始める。

林間合宿の初日は、穏やかに、
しかし確実に、次の段階へと踏み込んでいた。
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