第1章 転入生 白井狼薇という少女
女子に囲まれてるから苛ついてるわけじゃない。
話しかけられてるからでもない。
――拒まねぇんだな。
それが、妙に気に食わない。
自分が声をかけたら、
きっと同じように距離を取るだろう。
なのに、
あいつは、A組には“完全には閉じていない”。
「チッ……」
舌打ちが漏れる。
昼休み。
女子数人と机を囲む形になりながら、白井はほとんど喋らなかった。
それでも、
「これ、からあげ美味しいよ!」
「白井ちゃん、甘いの好き?」
「今度、買い出し一緒に行かない?」
そんな声が、自然に飛んでくる。
白井はその一つ一つに、短く答える。
「……好きです」
「……機会があれば」
それだけで、会話は続く。
――壊れない。
踏み込みすぎなければ、
距離を守れば。
そう、思っていた。
「白井」
ふいに、低い声。
顔を上げると、心操が立っていた。
あいつは、いつも通り淡々としている。
「午後の実技、組み分け出てる」
「……ありがとうございます」
それだけの会話。
けれど、
心操は一度だけ、女子たちと白井の間にある空気を見て、何も言わずに去った。
踏み込まない。
評価もしない。
それが、変わらず楽だった。
白井狼薇はまだ知らない。
A組のクラスメイトたちが、
“理由を知らないまま”
それでも彼女と関わろうとしていることを。
そしてその光景が、
爆豪勝己の中で、
言葉にならない感情を少しずつ、確実に育てていることを。