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オオカミ少女は愛の夢を見る

第1章 転入生 白井狼薇という少女


午前の実技が終わると、A組は一気に騒がしくなる。
汗と土の匂い、誰かの笑い声。
それが“いつもの空気”だ。

白井狼薇は、少しだけ離れた場所で水を飲んでいた。

視線を感じる。
けれど、それは警戒ではない。

「白井さん!」

声をかけてきたのは、緑谷出久だった。
少し遠慮がちに、でもはっきりとした声。

「実技どうだった? いきなりで大変だったよね」

白井はキャップを閉めてから、顔を上げる。

「……問題ありませんでした」

短い返答。
けれど、拒む響きはない。

「そっか! ならよかった」
緑谷は安心したように笑う。
「個性、今度詳しく教えてほしいな。無理じゃなければ」

白井は一瞬、言葉に詰まった。
“詳しく”。
その言葉の意味を、考えてしまう。

「……機会があれば」

それだけ答えると、視線を外した。

「うん! 無理しないでね!」

それで引く。
緑谷は、そういう距離の取り方が上手だ。

「ねえねえ、白井ちゃん!」

次に声をかけてきたのは、麗日お茶子だった。
笑顔は柔らかく、距離も近すぎない。

「お昼、一緒に食べない? 女子でさ!」

白井の動きが、一瞬だけ止まる。

女子で。
その言葉が、少しだけ胸に引っかかった。

「……私は」

断ろうとして、言葉を探す。

すると横から、蛙吹梅雨が静かに言った。

「嫌なら、無理しなくていいのよ。
でも、少し話すだけでもいいと思うわ」

押さない。
詰めない。

その距離感に、救われる。

「……少しだけなら」

小さく答えると、
八百万百がほっとしたように微笑んだ。

「ありがとうございます。
急に環境が変わると、疲れますものね」

“理解しよう”とする言葉。
それ以上、踏み込まない配慮。

少し離れた場所で、その様子を見ている男が一人。

爆豪勝己だ。

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