第4章 同じ時間を過ごす
「……林間合宿」
白井が、ぽつりと言う。
「……どう思う?」
心操は、少し考えてから答えた。
「……環境が変わるのは、悪くない。それに俺は去年まで普通科だったから。正直楽しみ。」
「……そっか。そうだよね。私も初めて。」
それ以上、言葉はいらなかった。
バスの揺れに身を預け、
白井は少しだけ目を閉じる。
肩が、触れそうで触れない距離。
それでも、
逃げたいとは思わなかった。
——ここにいる。
その感覚が、
今は大事だった。
⸻
後方から、
上鳴の声が飛ぶ。
「なー、白井ちゃん! 着いたら一緒に写真撮ろーぜ!」
「……うん、いいよ。」
返事をすると、
爆豪が一瞬だけこちらを見た。
視線が合う。
ほんの一瞬。
白井は、何も考えずに
小さく頷いた。
それだけで、
爆豪は視線を逸らす。
「……」
胸の奥が、少しだけざわつく。
——違う。
嫉妬じゃねぇ。
独占でもねぇ。
ただ。
「……隣、空いてたんだよな」
誰にも聞こえない声で、
そう呟いた。
⸻
バスは、山道へと入っていく。
林間合宿が、
もうすぐ始まる。
学校とは違う場所。
同じ時間を、もっと近くで過ごす数日間。
その始まりは、
こんなにも静かだった。
そしてこの静けさが、
やがて誰かの心を
大きく揺らすことになる。
まだ、誰も気づかないまま。