• テキストサイズ

オオカミ少女は愛の夢を見る

第4章 同じ時間を過ごす


「……林間合宿」

白井が、ぽつりと言う。

「……どう思う?」

心操は、少し考えてから答えた。

「……環境が変わるのは、悪くない。それに俺は去年まで普通科だったから。正直楽しみ。」

「……そっか。そうだよね。私も初めて。」

それ以上、言葉はいらなかった。

バスの揺れに身を預け、
白井は少しだけ目を閉じる。

肩が、触れそうで触れない距離。

それでも、
逃げたいとは思わなかった。

——ここにいる。

その感覚が、
今は大事だった。



後方から、
上鳴の声が飛ぶ。

「なー、白井ちゃん! 着いたら一緒に写真撮ろーぜ!」

「……うん、いいよ。」

返事をすると、
爆豪が一瞬だけこちらを見た。

視線が合う。

ほんの一瞬。

白井は、何も考えずに
小さく頷いた。

それだけで、
爆豪は視線を逸らす。

「……」

胸の奥が、少しだけざわつく。

——違う。

嫉妬じゃねぇ。
独占でもねぇ。

ただ。

「……隣、空いてたんだよな」

誰にも聞こえない声で、
そう呟いた。



バスは、山道へと入っていく。

林間合宿が、
もうすぐ始まる。

学校とは違う場所。
同じ時間を、もっと近くで過ごす数日間。

その始まりは、
こんなにも静かだった。

そしてこの静けさが、
やがて誰かの心を
大きく揺らすことになる。

まだ、誰も気づかないまま。
/ 231ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp