第4章 同じ時間を過ごす
雄英高校の正門前。
林間合宿用の大型バスが二台、静かに停まっていた。
「全員乗ったか?」
相澤の声が響く。
ぞろぞろと乗り込むA組。
いつもより少ない荷物、いつもより軽い空気。
白井は、バスの中を一瞬だけ見渡した。
——席、空いてる。
そう思ったとき。
「……こっち」
控えめな声。
振り向くと、
心操が、窓側の席を指していた。
「……いいの?窓側で。」
「どうぞ」
それだけ。
自然な流れで、
白井は心操の隣に腰を下ろした。
通路を挟んだ向こうでは、
切島と上鳴がすでに盛り上がっている。
女子も後方で楽しそうだ。
バスがゆっくりと動き出す。
「……酔う?」
心操が、前を向いたまま聞く。
「……大丈夫」
「なら、寝てもいい」
気遣いは最小限。
でも、必要な分だけある。
白井は窓の外に流れる景色を眺めながら、
小さく息を吐いた。
——落ち着く。
⸻
少し後ろの席。
爆豪勝己は、腕を組んで座っていた。
本当は、
隣に座ろうと思えば座れた。
席は、空いていた。
声をかける時間も、あった。
なのに。
「……」
視線の先には、
並んで座る二人。
白井と心操。
近すぎない。
話しすぎない。
でも、
あの距離は——
「……チッ」
小さく舌打ち。
言えねぇ。
「隣、いいか」なんて。
そんな柄じゃねぇし、
理由も説明できねぇ。
——ただ、一緒にいたかった。
それだけなのに。