第3章 知られていくこと
少し離れた廊下。
壁にもたれながら、
爆豪は、その光景を見ていた。
——三人。
白井、心操、轟。
距離が近い。
でも、ベタついていない。
必要な言葉だけを交わして、
必要なところだけを認め合っている。
「……」
胸の奥が、じわっとする。
苛立ちとは違う。怒りでもない。
——俺のいないところで、
——ちゃんと繋がってる。
それが、
やけに引っかかる。
「チッ……」
舌打ちして、視線を逸らす。
自分は、白井と“別の場所”で繋がっている。
朝のランニング。
寮の部屋。
課題のノート。
それで十分なはずだ。
なのに。
——俺の知らねぇ“輪”がある。
それが、
少しだけ、気に食わない。
⸻
教室に戻ると、
白井が顔を上げる。
一瞬、視線が合う。
「……勝己」
名前を呼ばれる。
爆豪は、何も言わずに顎を引いた。
「……終わったのか」
「……うん」
それだけ。
三人の会話は、自然に解散する。
轟は「また実習で」と言い、
心操は軽く手を挙げて去っていく。
残されたのは、二人。
「……別に」
爆豪が、ぽつりと言う。
「悪くなかった」
何が、とは言わない。
「……そう?」
白井が首を傾げる。
爆豪はそれ以上言わず、
背を向けた。
——言えねぇ。
自分が何にモヤっているのか、
まだ言葉にできない。
でも確かに、
白井は“誰かの中心”になり始めている。
それを、自分は外側から見てしまった。
静かに“違和感”を積み重ねていく。
まだ誰も、
本当の理由を知らないまま。