第1章 転入生 白井狼薇という少女
爆豪side
……なんだよ。
朝から、妙に目障りだ。
視界の端に、白いものが揺れる。
動くたびに、光を弾くみたいに。
チッ、と舌打ちして視線を逸らそうとして――
逸らせなかった。
白井狼薇。
昨日から隣の席に座ってるわけでもない。
話したわけでもない。
なのに、やたらと目に入る。
実技用のジャージに着替えて、
コートの外に出てきた瞬間だった。
――背が、高ぇ。
まず、そこだ。
女にしては、はっきり分かるくらいに高い。
姿勢がいいせいか、余計にそう見える。
それだけなら、別にどうでもいい。
問題は――
髪だ。
腰まである白金色のロングヘアが、
風に揺れて、陽を受けて、やけに綺麗に光ってやがる。
作り物みてぇな色。
なのに、不自然じゃない。
「……」
爆豪は無意識に、呼吸を止めていた。
振り向いた拍子に、目が合う。
琥珀色の瞳。
澄んでる。
冷たいわけでも、媚びてるわけでもない。
ただ――
まっすぐで、静かで、やけに奥行きがある。
くそ。
肌も白い。
無駄な装飾も、化粧もない。
なのに、長いまつ毛の影が頬に落ちて、
「美しい」って言葉が、勝手に頭に浮かぶ。
――気に食わねぇ。
誰が見ても、そう思うだろう顔だ。
整ってるとか、可愛いとか、そういう次元じゃねぇ。
“見た瞬間に分かる”。
ああ、これは――
一目で分かるタイプの女だ。
「おい、爆豪」
誰かが呼んでる。
でも、視線が切れねぇ。
モデルみてぇな体のライン。
無駄がなくて、細いのに弱そうじゃない。
強そうでもない。
ただ、綺麗だ。
それが、妙に腹立つ。
「……クソ」
爆豪は乱暴に顔を背けた。
美しい?
だからなんだ。
ヒーロー科だぞ、ここは。
役に立たなきゃ意味ねぇ。
綺麗なだけの奴なんて、山ほど見てきた。
なのに――
さっき、ほんの一瞬だけ見えた横顔が、
頭から離れねぇ。
感情を削ぎ落としたみたいな表情。
誰にも近づかせない距離。
“見せない”くせに、
“目に焼き付く”。
――最悪だ。
「見んなよ」
誰に言ったのかも分からねぇ言葉を吐き捨てて、
爆豪は拳を握る。
心臓の鼓動が、うるさい。
理由なんて、ねぇ。
ただ、分かる。
あいつは――
視界に入るだけで、厄介だ。