第3章 知られていくこと
「評価、良好」
相澤の声が響く。
「連携に無駄がない。互いに干渉しすぎず、必要なところだけ補っている」
それは、この試験で最も高く評価される点だった。
白井は、少しだけ肩の力を抜いた。
「……助かった」
演習場を出ながら、そう言うと、
轟は首を横に振る。
「こちらこそ」
一拍置いて、続ける。
「お前と組むと、判断が冴え渡る。」
感情を込めすぎない、でも正直な言葉。
「……ありがとう」
それ以上は、言わない。
それでいい。
⸻
少し離れた場所。
腕を組んで試験を見ていた
爆豪勝己は、
無言のまま二人を見ていた。
——噛み合ってやがる。
悔しい、とは違う。
否定する気もない。
でも。
「……」
胸の奥に、
またあの感覚が残る。
——俺の知らねぇところで、
——ちゃんと信頼されてる。
それが、
少しだけ、面白くない。
「チッ……」
小さく舌打ちして、視線を逸らした。
⸻
試験を終え、
控室へ戻る途中。
「……お疲れ」
背後から声をかけられる。
振り向くと、
爆豪だった。
「……お疲れ」
短く返す。
「悪くなかったな」
それだけ。
褒め言葉としては、十分すぎる。
「……ありがとう」
白井がそう言うと、
爆豪は一瞬だけ黙り込み、
それから視線を前に向けた。
「……次は、俺だ」
それが、何を意味するか。
白井は深く考えなかった。
「……うん」
ただ、頷く。
⸻
白井狼薇はまだ知らない。
今日の試験で得たものは、
評価だけじゃない。
轟との“静かな信頼”
爆豪の中に芽生えた、言葉にならない感情
そして、自分が誰かと並んで戦える場所に立っているという事実
確実に進んでいる。
知られていくこと。
そして、選ばれていくこと。
その中心に、
彼女自身が立っていることに、
まだ気づかないまま。