第1章 転入生 白井狼薇という少女
授業が始まる。
白井は静かにノートを取る。
必要以上に話さない。
誰とも距離を詰めない。
それは、ずっと選んできたやり方だった。
――知られなければ、壊れない。
それが、自分を守る唯一の方法。
「午後は実技だ」
相澤の言葉に、教室がざわつく。
白井は反応しない。
机の上で、指を組むだけ。
隣の心操も、何も言わない。
視線も交わらない。
ただ、同じ空間にいるだけ。
白井狼薇はまだ知らない。
この何気ない席替えのような出来事が、
誰かの感情を静かに、しかし確実に揺らし始めていることを。