第2章 距離を、選ぶ
待ち合わせ場所は、駅前の小さな広場だった。
制服ではなく、私服。
それだけで、少しだけ空気が違う。
「おっ、白井!来たな〜!」
切島鋭児郎が先に気づいて手を挙げる。
「今日は完全オフだな!」
「……うん」
そう答えながら、
“完全オフ”という言葉を、心の中でなぞる。
ヒーローでも、生徒でもなく。
ただの、クラスメイト。
「私服だと印象変わるね!」
芦戸三奈が楽しそうに言う。
「でも狼薇っぽい!」
“狼薇っぽい”。
それが悪い意味じゃないことが、もう分かる。
「写真撮ろ!」
麗日お茶子がスマホを構える。
「はい、みんな寄って〜!」
一瞬、足が止まる。
——輪の中。
昨日なら、半歩引いていた。
でも今日は、引かなかった。
自然に、列に加わる。
「近っ!」
上鳴電気が笑う。
「でもいい感じじゃん!」
シャッター音。
一瞬の光。
映った自分の顔が、
思ったよりも、硬くなかった。