第2章 距離を、選ぶ
……別に、たいしたことじゃねぇ。
爆豪勝己は、放課後の訓練場でグローブを外しながら、
自分にそう言い聞かせていた。
「行くか行かねぇか、決めろ」
言ったのは、それだけだ。
引っ張ったわけでも、励ましたわけでもない。
ただ、
ウジウジすんなと言っただけ。
それなのに。
「……チッ」
思い出すのは、
白井が顔を上げた瞬間だ。
迷ってた。
確かに、迷ってた。
輪の外に立つ癖が、
足を引っ張ってるのが、見えた。
――だから言った。
それだけのはずだった。
「俺が言わなくても、どうせ誰かが言ってたろ」
誰に向けるでもなく、吐き捨てる。
A組はそういうクラスだ。待つし、受け入れる。
なのに。
「……なんで俺が気にしてんだよ」
自分が言った言葉で、
誰かが一歩踏み出した。
その事実が、
胸の奥に引っかかって離れねぇ。