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オオカミ少女は愛の夢を見る

第2章 距離を、選ぶ


放課後の教室は、いつもより騒がしかった。

「よし、決まりな!」
切島鋭児郎が声を張る。
「今週末、A組で合同トレーニングの打ち上げ兼ねて、外出イベントな!」

「え、いいねそれ!」
上鳴電気が身を乗り出す。
「たまにはヒーロー科っぽくないことしよーぜ!」

ざわっと、教室の空気が弾む。

「全員参加……だよね?」
麗日お茶子が周囲を見回しながら言う。

“全員”。

その言葉が、白井の胸に静かに引っかかった。

無意識に、半歩だけ引く。

——行けるだろうか。
——輪の中に、入って。

「狼薇も来るよね?」

芦戸の明るい声。
悪気も、圧もない。

「……えと、その、」

一瞬、言葉が出なかった。

行きたい、と思っている自分がいる。
でも、行っていいのか分からない自分もいる。

「無理ならさ」
お茶子がすぐに言葉を添える。
「途中で帰っても全然いいし!」

逃げ道を残してくれる、その優しさが、
逆に迷わせる。

——選ばなきゃいけない。

そのとき。

「おい」

低く短い声。

振り向くと、
爆豪勝己が、机に肘をついてこちらを見ていた。

「来るか来ねぇか、それだけだろ」

ぶっきらぼう。
でも、突き放す言い方じゃない。

「来ねぇなら、それでいい」

一拍置いて、続ける。

「……来るなら、ウジウジすんな」

それだけ。

背中を押す言葉じゃない。
でも——

逃げる方向を、塞いだ。

白井は、視線を落とし、
それからゆっくりと顔を上げた。

「……行く」

自分でも驚くほど、声ははっきりしていた。

一瞬の静寂。次の瞬間。

「よっしゃ!」
切島が拳を突き上げる。
「全員参加な!」

「白井ちゃんが来るなら俺も楽しみだわ!」
上鳴が笑う。

「楽しみだね」
お茶子が微笑む。

胸の奥が、少しだけ熱くなる。

——受け入れられている。

大げさじゃない。
当たり前みたいに。
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