第2章 距離を、選ぶ
翌日の授業は演習だった。
演習エリアに、相澤の声が響いた。
「今回は二人一組。環境対応と判断力を見る」
端末に視線を落とし、淡々と続ける。
「轟。白井。このチームで行け」
一瞬だけ、空気が変わる。
白井は小さく息を吸った。
横に立つのは、轟焦凍。
静かな存在感。表情が読めないよくわからない人。
「よろしくな。白井。」
先に声をかけたのは轟だった。
「……よろしく」
短く返す。
それだけで、十分だと思えた。
演習開始。
想定は極端な温度差がある施設内。
氷結と熱源が混在し、判断を誤れば足を取られる。
「俺が温度を安定させる」
轟は状況を一瞥して言う。
「無理に前に出なくていい。
必要なときだけ、合図する」
命令じゃない。配慮でもない。
役割の共有だ。
「分かった。私は合わせる方が得意。」
白井は頷き、視界を広く取る。
足音、反射、空気の流れ。
轟の動きに合わせ、位置を変える。
「……判断、早いな」
轟がぽつりと言った。
「癖」
それだけ答える。
「悪い癖じゃない」
淡々と、でも否定の余地なく。
その言い方に、胸の奥が少しだけ緩んだ。