第2章 距離を、選ぶ
しばらく歩くと分かれ寮に着いた。
「じゃあ。俺はこっちだから。」
心操が言う。
「……また明日」
白井は、少しだけ迷ってから答えた。
「……また明日ね。」
背を向けて、それぞれの部屋へ。
数歩進んでから、
白井は立ち止まった。
――安心、してる。
誰かと一緒に帰って、
それが負担じゃない。息がしやすかった。
心操は、
自分を変えようとしない。
でも、置いていかない。
“友人”という言葉を使うには、
まだ早い。気もする。
それでも。
白井狼薇は、はっきりと思った。
――この人の隣なら、
――無理をしなくていい。
それが、
彼女にとって初めての“安全な距離”だった。
白井狼薇はまだ知らない。
この静かな友情が、
これから訪れる波の中で、
自分を立たせてくれる“足場”になることを。
そして、
誰よりも先にその変化に気づいている人物が、
別の場所で、
何も言わずに見ていることを。