第1章 転入生 白井狼薇という少女
朝の教室は、いつも通りの騒がしさだった。
席に着いた白井は、ノートを開きながら深く息を吸う。
昨日の会話を、何度も頭の中でなぞってしまう。
――敬語、やめろ。
――俺の前では。
意識すればするほど、口が重くなる。
「おはよ、白井ちゃん!」
麗日お茶子が、いつもの調子で声をかけてくる。
「……おはよう、ございます」
言ってから、はっとする。
「あ、おはよう。麗日さん…。」
お茶子が一瞬だけ目を瞬かせて、それからくすっと笑った。
「全然いいよ!でも、昨日からちょっと変えようとしてる?」
「……少し」
曖昧に答えて、視線を落とす。
「嬉しい!仲良くなれてるって感じで!」
麗日は弾ける笑顔で答えて席に戻った。
嫌がられなかった、、。
「お、白井!」
切島鋭児郎が手を挙げる。
「今日の実技、また一緒になりそうだな!」
「……はい、よろしくお願いします」
あ、やってしまった。
自分でも分かるくらい、
“抜けきっていない”。
切島は気にせず笑ったが、
白井の胸の奥が、少しだけ重くなる。