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オオカミ少女は愛の夢を見る

第1章 転入生 白井狼薇という少女


爆豪は一瞬、言葉に詰まった。

理由?
そんなもの、はっきりしていない。

「……うるせぇ」

視線を逸らし、ぶっきらぼうに続ける。

「チーム組んだ相手に、
他人行儀されるのが気に食わねぇだけだ」

それだけ。

命令でも、強制でもない。
でも、逃げ道もない言い方。

沈黙が落ちる。

白井は、自分の中の感覚を探した。

怖いか。
拒みたいか。

――違う。

ただ、慣れていないだけだ。

「……分かりました」

そう言ってから、少しだけ間を置く。

「……爆豪く…ん?」

呼び捨て。

声は小さかったが、確かに届いた。

爆豪の肩が、わずかに動く。

「……勝己でいい。」

そう言いながら、
どこか機嫌が直ったようにも見えた。

「次から、それでいけ」

白井は、静かに頷いた。

「……努力します…。」

「“努力する”だろ。早速かよ。」

「……努力する…ね。」

言い直す。

ほんの一瞬、
爆豪の口元が、わずかに緩んだ気がした。

「……よし」

それだけ言って、踵を返す。

去り際に、ぼそりと一言。

「今日の動き、悪くなかった」

褒め言葉にしては、乱暴すぎる。
でも――

白井の胸の奥に、
小さく、確かな熱が残った。

――距離が、ひとつ縮んだ。

それだけ。それだけで、十分だった。

白井狼薇はまだ知らない。

敬語をやめるという、
たったそれだけの変化が、
二人の関係を大きく動かし始めたことを。

そして爆豪勝己自身も、
なぜそれが気に食わなくて、
なぜそれで納得してしまったのか――
まだ、分かっていない。

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