第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
夜の寮。
爆豪の部屋の明かりは、
机のライトだけが点いていた。
二人は、ベッドではなく、
床に並んで座っている。
距離は近いけれど、
触れてはいない。
——話すための距離。
「……白井」
爆豪が、
いつもより静かな声で呼ぶ。
「……この前言っただろ」
「……“知りたい”って」
白井は、小さく頷いた。
「……うん」
爆豪は、一度だけ拳を握ってから、
ゆっくり口を開く。
「……キスの先は」
言葉を選ぶ。
「……もっと、距離が近くなる。
それに、……触れる場所も増える。
……相手を、欲しいって思う気持ちも、
今より強くなる」
白井は、
逃げずに聞いていた。
「……でもな」
爆豪は、
はっきりと言う。
「……それぁ、勢いでやるもんじゃねぇ。
……分からないまま、されるもんでもねぇ。
……お前が」
一拍。
「……“いい”って言って、“分かった”って思って」
「……それからだ」
白井の胸が、
静かに鳴る。
「……勝己」
「……なに」
「……触れたくなるのも、欲しいって思うのも。
……悪いことじゃ、ないんだよね?」
爆豪は、
少しだけ驚いた顔をしてから、
鼻で息を吐いた。
「……当たり前だ。
……好きな相手なら、自然なことだ」
……俺も、、、そうだ」
その一言に、
白井の指先が少し震える。
「……でも」
爆豪は続ける。
「……怖くなったら、止める。
……分からなくなったら、話す。
……嫌なら、はっきり言ってくれ。
……俺ぁ、、、、必ず止まる。」
その言葉は、
約束だった。
白井は、
そっと息を吐いた。
「……ありがとう
……勝己が、そう言ってくれるなら、
……私は、ちゃんと考えられる」
一拍。
「……ちゃんと、選べる」
爆豪は、
白井を見る。
真剣で、
でも優しい目。
「……急がねぇ。
……でも」
一拍。
「……逃げもしねぇ」