第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
「……怖いからじゃなくて。
……勝己となら、
ちゃんと向き合えるって思ったから」
廊下の空気が、
ぴんと張る。
爆豪は、
すぐには答えなかった。
「……狼薇」
低い声。
「……それは、覚悟がいる話だ」
「……うん」
「……逃げ道、なくなるぞ」
「……うん」
即答だった。
爆豪は、
白井をじっと見つめてから、
小さく息を吐いた。
「……分かった」
「……でも」
一拍。
「……順番は、守る」
「……言葉で話す」
「……分からないことは、分からないって言え」
白井は、
小さく笑った。
「……それでいい。
いや、……それがいい」
その日の夜。
共用スペース。
ソファに並んで座りながら、
白井はふと呟いた。
「……ねえ」
「……何だ」
「……前はね」
「……触れられるの、ちょっと怖かった」
爆豪の肩が、
わずかに動く。
「……でも、……今は」
白井は、
そっと爆豪の手に触れた。
「……大丈夫」
「……ちゃんと、自分の気持ちが分かるから」
爆豪は、
その手を離さなかった。
「……成長したな」
ぽつりと。
「……勝己のおかげ」
「……俺だけじゃねぇ」
「……お前が、自分で決めた」
その言葉に、
白井の胸が、
じんと温かくなる。
——知りたい。
——進みたい。
——でも、
——自分を置いていかない。
それが、今の白井だった。
二人は、
並んで同じ方向を見る。
少し先の未来を。
急がず、
逃げずに。