第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
夜の寮は、
いつもより静かだった。
自分の部屋のベッドに腰掛けて、
白井は膝の上で手を組む。
——キスは、好き。
——触れられるのも、
——触れるのも、
——全部、心地いい。
でも。
爆豪が止まる理由も、
ちゃんと分かっていた。
——分からないまま、
——進ませたくない。
それは、
守られているからこそ。
「……」
白井は、
胸に手を当てる。
——私は。
——この先を、
——“知らないまま”でいたいわけじゃない。
——でも、
——急ぎたいわけでもない。
ただ。
——ちゃんと知って、
——ちゃんと選びたい。
翌日。
放課後の校舎。
人気のない廊下で、
白井は足を止めた。
前を歩いていた
爆豪が振り返る。
「……どうした」
白井は、
一度だけ深呼吸してから言った。
「……勝己
……昨日のこと。……止めてくれたでしょ」
爆豪の目が、
一瞬だけ揺れる。
「……ああ」
「……ありがとう」
はっきりとした声。
「……でも」
白井は、
まっすぐ見た。
「……私は、知りたい」
「……何を?」
「……“この先”」
言葉は、
ゆっくり選ぶ。