第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
最近、キスは“特別”じゃなくなりつつあった。
でも、“当たり前”には、
まだなっていない。
その境目が、
一番危ない。
夜の寮。
爆豪の部屋の明かりは落としてあって、
机のライトだけが、二人を照らしていた。
白井は、爆豪のベッドに腰掛けている。
爆豪は、床に座って、背中をベッドに預けていた。
距離は、近い。
でも、
触れてはいない。
「……勝己」
白井が、
小さな声で呼ぶ。
「……何だ」
「……最近さ」
一拍。
「……キス、多くない?」
爆豪の肩が、
ぴくりと動く。
「……お前が、近ぇからだろ」
「……そう?」
白井は、
少しだけ身を乗り出した。
「……でも。……嫌じゃない」
その言葉で、
空気が変わる。
爆豪は、
ゆっくり立ち上がった。
「……狼薇」
低く、
でも抑えた声。
「……それ以上、近づくな」
「……え?どうして?」
素直な疑問。
——悪気は、
——本当にない。
「……今は」
一拍。
「……キスで、止めてる」
その言葉に、
白井の胸が、
きゅっと鳴る。
「……止めてる?」
「……ああ。……これ以上行くと」
……俺ぁ、多分……」
言葉を切る。
——言わなくても、
——伝わる。
白井は、
しばらく黙ってから言った。
「……でも」
「……勝己と、キスするの。
……好き、、なの。」
爆豪の喉が、
はっきり鳴る。
「……だから」
白井は、
一歩近づいた。
「……もう一回、
してもいい?」
——確認。