第8章 ぬくもりに、名前をつけるまで
——俺は、
——信じてるって決めただろ。
白井を。
放課後。
気づけば、爆豪の部屋。
白井がいる。
「……今日も来た。」
「……勝手に来るな」
そう言いながら、
ドアを閉める。
白井は、
当たり前みたいに言う。
「……だって、ここ落ち着く。
……勝己がいるから」
胸の奥が、
じわっと熱くなる。
「……お前、……それ、
分かって言っとるんか?」
「……?」
首を傾げる。
——分かってねぇ。
——だから、
——余計に厄介だ。
白井は、
自然に爆豪の隣に座り、
膝を寄せる。
「……今日はね、……甘えていい日。」
「……昨日もだろ」
「……今日は、もっと」
何気ない言葉。
でも。
爆豪の理性が、
確実に削れていく。
「……白井」
低い声。
「……お前、自覚ねぇだろ」
「……何が?」
「……俺が」
言いかけて、止める。
——言うな。
——まだ、
——言うとこじゃねぇ。
爆豪は、
白井を引き寄せた。
抱きしめる。
強くない。
でも、離さない。
「……」
白井は、
何も言わずに腕の中に収まる。
——抵抗しない。
——信じきってる。
「……クソ……」
白井の髪に、顔を埋める。
——これ、
——どっちが溺れてるんだ。
白井が、
小さく呟く。
「……勝己、あったかい」
その一言で、
完全にやられた。
——守るつもりだった。
——余裕でいるつもりだった。
なのに。
「……離す気、ねぇからな」
「……何を?」
「……独り言だ」
白井は、
よく分からないまま、
でも安心したように笑った。
その笑顔を見て、
爆豪は悟る。
——ああ。
——俺の方が、
——もう戻れねぇ。
無自覚に。
確実に。
白井狼薇という存在に、
深く、深く、
溺れていた。